黙々と働き、夜更かしして本を読み、
一人の夜には過ぎる料理を時折作り、
寂しげに苦笑する。
香りのいい風呂に入り、
髪を乾かさないままとてもよく眠る。
その屋敷はまるで、彼女の繭のよう。
蓄えを削り困窮を覚悟で旅をして、
頭を抱えたり、
友人と食事に行き、一人で観劇を楽しみ、
またひっそりと質素な繭に帰る。
一人で過ごす世界は孤独だが、
彼女は決して不幸なだけでもなかった。
古い屋敷で完結したまま、
閉ざされた静かな箱庭。
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ディノの独白の章。
ネアちゃんの暮らしぶりの描写がとても好き。
閉ざされた小さな箱庭。
けれども、とある窓からディノがネアを見ていた、見守っていた?という事実はちょっと怖いです。
世界はいろんな層が重なってできているらしいから、私たちも、人ならざるものにみられているの・・・か。
まあ人に見られている方がこわいかも(犯罪ですし)。
でも見られていたからこそ、ギリギリでウィームに来ることができたのだし。めでたし。
現世での冬は、健康を損なったネアには、きっと越せなかったろうからね。
初夏の霧深い夜明けの庭に、
微かな陽の光を透かして霧雨が降っている。
お気に入りのピアノの曲に、
一人きりの朝食。
ごめんね。君はもう、
その箱庭には戻れない。
寂しくも美しい光景だなあ・・・。