音痴。これが武器。
「さすがに私も落ち込みます」にて
音痴発覚の検証のための公開処刑はかわいそうでした。
そして周りの反応。
「まさか、ネア様が歌えないとは……」
「ヒルド、歌えないではない。歌えてないんだ」
「ネア、可哀想に」
「ディノ、満面の微笑みで頭を撫でないで下さい」
「失礼ですが、ディノ様は変わった歌が好きなのですか?」
「私の趣味は真っ当だと思うよ。ネアの場合、捕まえるのに必死で、歌はあんまり聞いてなかったからね。でも、ネアの歌は、……………可愛いかな」
「………ディノ、暫く椅子は禁止です」
ディノの追い討ち。
「私は、自分で自分を、音痴だと思ったことは一度もありません。……………それどころか、ずっと、ちょっと悪くない程度の自信を持っていました」
「…………耳も悪かったのだな」
エーダリア様の火に油。
「思いがけない生き物を捕まえました」の中でのいろいろ。
ネアの歌唱試験に立ち会ったゼノーシュは半日寝込んだし、
ネアは、こっそりと、庭にいた蝶の魔物で歌唱実験をしたこともある。
しかしその結果、ぱたぱたと飛んでいた蝶は、数秒でお亡くなりになってしまった。
その悲劇を経て、ネアは、己自身の喉が最終防衛手段であることを確信した。
ものすごい武器。歌乞いってこういうのだっけ?と思わなくもなく。
「待ってください!選曲によっては、私は音痴じゃなくなれるんですか?!」
と、アルテアさんによって僅かな希望を抱くも
「よし、通常仕様では音痴なのは納得した。二度と歌うな」
と落とされてしまう。
「ネアは音痴だよ。転職は出来ないから、諦めるといい」
と無下に言ってしまうディノもひどい・・・。
結果、ネアちゃんは、52/980にて
昔から馴染んだ曲は歌えるらしいという結論になった。
どうやら音楽にも造詣が深いらしいヒルドが、ネアの音痴は調子が外れる音痴なので、その脱線を許さないくらいに強く体全体で記憶してしまえば、きちんと歌えるのだろうと解説を出してくれたからでもあるのだろう。
強く体全体で記憶・・・。
なお、上手いのと下手なのとを交互に聞かされたアルテアは、かなり疲弊しふらふらで消えて行き、ネアは、今度こそ二度と彼に会えないのではと考えている。
そんなことにはならなかったのだけども。