エマジュリアはディノに恋する向日葵色の髪の黄菊の魔物。
「脆弱だけれど、醜いとまでは言わないわ。けれど、何の才能があるの?お前だけのものは何?凄烈な野望もなく、心を溶かす柔和さもない。お前の無色さは、心から醜悪だわ」
「お前は醜悪だわ。理解しないことが、不相応なことが、そして甘んじていることがとても醜い」
対するネア。
「そうですよ。私は多分、そういう人間です。自分で理解して目を逸らしている分、あなたの言葉は刃物みたいですね」
「お前はそれを、変えようともしないの?」
「変えられないんです。私達人間は、強くて綺麗なあなた方とは違い、とても強欲な生き物なんですよ」
「いつかそれが私を殺すのだとしても、この有り様を手離せば、私は私ではなくなってしまう。だから、私は、私を手離せません。これは私の理想ではない。でも、私自身なんです」
なんだかすごい会話です。上品で静かなのだけども、ちょい怖い。
エマジュリアのような美少女に「心から醜悪だわ」と言われたら、かなり凹みそうです。
エマジュリアは真っ向勝負なところが好ましかったです。
悲しい結末にはなりましたが、後に出てくる呪ってくる某妖精に比べたら、潔くて素敵です。
(あの子も、恋をすればいいのだわ)
恋をして、差し出した両手を切り取られるような苦しみを味わい、大いに嘆けばいい。そんな思いの一つも持たないのだから、あの少女はとても哀れだ。
(私は、とても幸せね。とうとうこの最後まで、最初の恋を手放さなかったのだから)
そう言って退場していったエマジュリア。
魔物の最後は、灰になって崩れ散る。
またこの灰から魔物が生まれるのだとしたら、その魔物もいつか、私のように恋をするに違いない。
だいたいは同じ役割を持つ、次代の魔物が生まれるのらしいです。