くすまもな日々

「薬の魔物シリーズ」個別包装仕様のファンのブログ

語彙力のある応酬

エマジュリア』にて。

エマジュリアはディノに恋する向日葵色の髪の黄菊の魔物。

「脆弱だけれど、醜いとまでは言わないわ。けれど、何の才能があるの?お前だけのものは何?凄烈な野望もなく、心を溶かす柔和さもない。お前の無色さは、心から醜悪だわ」

「お前は醜悪だわ。理解しないことが、不相応なことが、そして甘んじていることがとても醜い」

対するネア。

「そうですよ。私は多分、そういう人間です。自分で理解して目を逸らしている分、あなたの言葉は刃物みたいですね」

「お前はそれを、変えようともしないの?」

「変えられないんです。私達人間は、強くて綺麗なあなた方とは違い、とても強欲な生き物なんですよ」

 「いつかそれが私を殺すのだとしても、この有り様を手離せば、私は私ではなくなってしまう。だから、私は、私を手離せません。これは私の理想ではない。でも、私自身なんです」

なんだかすごい会話です。上品で静かなのだけども、ちょい怖い。

エマジュリアのような美少女に「心から醜悪だわ」と言われたら、かなり凹みそうです。

エマジュリアは真っ向勝負なところが好ましかったです。

悲しい結末にはなりましたが、後に出てくる呪ってくる某妖精に比べたら、潔くて素敵です。

(あの子も、恋をすればいいのだわ)

恋をして、差し出した両手を切り取られるような苦しみを味わい、大いに嘆けばいい。そんな思いの一つも持たないのだから、あの少女はとても哀れだ。

(私は、とても幸せね。とうとうこの最後まで、最初の恋を手放さなかったのだから)

そう言って退場していったエマジュリア。

魔物の最後は、灰になって崩れ散る。

またこの灰から魔物が生まれるのだとしたら、その魔物もいつか、私のように恋をするに違いない。

だいたいは同じ役割を持つ、次代の魔物が生まれるのらしいです。