「剣戟(けんげき)の夜明け」より。
(ディノから)もらった指輪を失くしたと思って一人で探しにきたら、馴染むと溶ける仕様だったと聞かされた時のネアちゃん。
「私は、指輪を失くしてしまったと思って、ものすごく傷付きました。悲しくて眠れなくて、ずっと不安で、朝食でもパンを三個しか食べれませんでした」
ネアが、三個しか食べれていないとは、かなり由々しき事態だ。料理人の妖精からは、体調が悪いのかと聞かれてしまったではないか。
「指輪を失くしたと知って、ディノがしょんぼりしてしまったらと考えて、居ても立っても居られなくて…」
「ごめん、ネア」
「私は、夜はたっぷり眠る主義です!ここにだって、もしかしたら蜘蛛がいるかもしれないのに、それでも頑張って来て、得体の知れない果物を食べる覚悟で胃薬も持ってきました!」
「ご、ごめんね、ご主人様……っ!」
シリアスだった雰囲気が霧散。良かった良かった。
ネアちゃんは危機に巻き込まれやすいけれど、回避能力もすごいと思います。
「どうして、最初から溶けると言わないのですか!」
「………君が、………そのようなものだと知ったら、嫌がるかなと思ったんだ」
「そう知らされても、こちらでは、そのような不思議なものもあるのだなと考えるばかりでしょう。私の宝物がなくなってしまったと思うよりは、ずっと心に優しかった筈です!」
ディノからもらった指輪は、ネアちゃんにとっては大事なもの。
これは鎖だった。
この魔物の守護が、ネアに繋がれているという大切な鎖で、ネアという人間が、やっと見付けたこの美しくて奇妙な世界の住人であるという証のようなもの。
これがあれば、もう一人ぼっちの家に帰らずに済むような気がして、ネアの大事なお守りになっているのだ。
お守り。
失くすと心許無くなるもの。
そして、くすまもで気に入っているところは、甘くなりすぎないところです。
ロマンティックではあるのですけれど、ほどよくビターなところが好きですね。