「告解」より。
「ジゼルの心を剥ぎ取ってきた」
「ジゼルはね、統一戦争で双子の妹を喪ってから、初めて誰かに心を傾けようとしていたんだよ。私が、君に傾けただけの心を剥ぎ取ってしまったから、またあれの瞳は翳り落ちた。残酷だと思うかい?」
「そう問いかけるということは、ディノはそれを残酷だと思うのですね」
今までの彼にないことだったので、不思議に思ってそう聞き返してみると、少し驚いたように短く息を飲んだ。
「……そうなのかな。自分ごととして知ってしまうと、それが残酷だと知ったのだろうか。知るということは、誰かの分まで知ってしまうということなんだね」
考えながら話す声の無防備さに、ネアは、大事な魔物を愛おしく思った。
私も愛おしく思った場面です。
そして安定のやりとり。
「………も、もしかして、ディノにも本当の姿とかいうものがあって、獣や虫だったりします?!」
不自然な沈黙に慌てて振り返り確認すると、ぎょっとしたように首を振られた。
「私は、これが本来の姿そのままだよ」
「良かったです! 少しだけ、前言撤回しそうになりました!」
「ネアは、私が獣だったら、………嫌いになってしまうのかい?」
「もはやここまで大切になると、嫌いになることはありませんが、……イヌ科であれば、玉葱を食べさせても大丈夫だろうか?とか、寝台に入れたら毛だらけになるのかなとか、少し運用を考え直しますね。虫であった場合は、とりあえずお部屋は別にします」
「場合によっては、結構しっかりと追い出されてしまうのだね……」
「でも、ディノは違うのでしょう?」
「違うよ。だから、追い出さないで」
「はい。だから、追い出しませんよ」
ネアちゃんの包み隠さない本音はなかなかイイですよね・・・。