くすまもな日々

「薬の魔物シリーズ」個別包装仕様のファンのブログ

育つ情緒

告解」より。

「ジゼルの心を剥ぎ取ってきた」

「ジゼルはね、統一戦争で双子の妹を喪ってから、初めて誰かに心を傾けようとしていたんだよ。私が、君に傾けただけの心を剥ぎ取ってしまったから、またあれの瞳は翳り落ちた。残酷だと思うかい?」

「そう問いかけるということは、ディノはそれを残酷だと思うのですね」

今までの彼にないことだったので、不思議に思ってそう聞き返してみると、少し驚いたように短く息を飲んだ。

「……そうなのかな。自分ごととして知ってしまうと、それが残酷だと知ったのだろうか。知るということは、誰かの分まで知ってしまうということなんだね」

考えながら話す声の無防備さに、ネアは、大事な魔物を愛おしく思った。

私も愛おしく思った場面です。

そして安定のやりとり。

「………も、もしかして、ディノにも本当の姿とかいうものがあって、獣や虫だったりします?!」

不自然な沈黙に慌てて振り返り確認すると、ぎょっとしたように首を振られた。

「私は、これが本来の姿そのままだよ」

「良かったです! 少しだけ、前言撤回しそうになりました!」

「ネアは、私が獣だったら、………嫌いになってしまうのかい?」

「もはやここまで大切になると、嫌いになることはありませんが、……イヌ科であれば、玉葱を食べさせても大丈夫だろうか?とか、寝台に入れたら毛だらけになるのかなとか、少し運用を考え直しますね。虫であった場合は、とりあえずお部屋は別にします」

「場合によっては、結構しっかりと追い出されてしまうのだね……」

「でも、ディノは違うのでしょう?」

「違うよ。だから、追い出さないで」

「はい。だから、追い出しませんよ」

ネアちゃんの包み隠さない本音はなかなかイイですよね・・・。