一連の事故の流れ。
ウィリアムさん正式登場回です。
「サラフ」
「ガゼットの大鷲城」
「ウィリアム」
「薔薇とヤドリギ」
●ウィリアムの表現抽出
通常の人間ではあり得ない場所に立ち、こちらを見下ろしている男性の髪は白い。
真っ白な軍服姿をしており、はたはたと風に揺れる白いケープの裏地は、ぞくりとするような深紅であった。
不思議な程に光を孕む白金色の瞳を見た途端に確信する。
ネアを見下ろしているのは、明らかに白持ちの魔物だった。
柔らかな声は美しい。
魔物らしい硬質さよりも、どこか温もりのある穏やかで落ち着いた声だ。
ディノが豪奢な雪豹なら、この人は質実剛健の端正な森狼のよう。
同じ色彩を持っていても、やはり伝わる印象がまるで違う。
少し、グラストさんに似ている
ウィリアムの服装は、純白の軍服だ。
実戦に出る者らしい無駄のない装いだが、襟元の薔薇枝のような枝葉模様の刺繍などの細やかな装飾には高位の人外者らしい惚れ惚れとするような美しさもある。
短めの飾緒は実用的だが、サッシュのような装飾や星章や小授のような装飾はとても精緻だ。
こうして、装い一つで高貴な軍人だと知れるのは、相手の事をよく知らない場面では意外に有難い。
王族然としたディノや、夜会などに向かうような装いの洒落者のアルテアに比べると、生きた土地に寄り添う役割を得ているもののように感じた。
はっとする程に鮮やかな白金色の瞳がこちらを見た。
決して鮮やかな色味の入る瞳ではないのに、やはりディノの瞳のように光を孕むような鮮やかさがある。
ウィリアムの瞳には、白金の中に葡萄酒色の欠片が散らばっていて、まるで人が死の間際に見る色のよう。
●サラフ(風竜)
白っぽい砂色の髪に、凛光の黄色の混ざったオリーブグリーンの瞳。
肌は蜂蜜色で、目元には僅かに白緑の鱗が浮かぶのだから、こちらもまた白に近い色が多い生き物ではないか。
装いはくすんだ緑色の僅かに異国風の騎士服めいたもので、青色を基調とした鮮やかな織り布を腰に巻き付けていた。
ふわりと広がる上着はグラストのケープの下の装いに似ていたが、その飾り帯の彩り一つでぐっと印象が変わる。
そんな服装一つで、異国の生き物なのだとしみじみ感じる装いだ。
●家事ができるウィリアム
「有難うございます。もしかして、ウィリアムさんが淹れて下さったのですか?」
「ああ。こういうことは得意だからな」
「……家事」
「そうだな、炊事も洗濯も出来る。俺が留まる戦乱の地では、あまり安定した生活は望めないし、下手に誰かを雇うといつもすぐに死んでしまうから」
「雇用人も死んでしまうのですか?」
「ある程度高位ならいいんだろうけど、俺はそういう従属は嫌でね。自分でやる方が性に合ってる」
私がうわぁと思った部分(感想)
伸ばされた手が、わしわしとネアの頭を撫でた。
儀礼用に髪を編み込んで結い上げているので、あちこちが引っ張られてぎしぎしする。
「嬉しいものだな。俺が撫でても死なない人間は珍しい」
「そ、その前提で、よくも撫でようとしましたね………!」
その前提で気軽に試さないで欲しいと切に思う・・・。