「ウィリアム」より。
魔物は無垢なものが好きだ。
けれども、魔物と語るには決して無垢ではいけない。
だからこそ、無垢ではなく、この世界にのみ無垢である迷い子は、魔物の心に触れる形をしているのかもしれない。
「ウィリアムさんは、眠らないのですか?」
「夜から夜明けにかけては、多くのものが終わる時間なんだ」
「終わるものも、時間の格差があるのですね」
「夜の海や、雨の日。なぜかよく晴れた春の日も、終わるものが多い」
なぜかよく晴れた春の日・・・。そうなんだなぁ。
シルハーンの指輪持ちだからと言うだけではなく、彼女は確かに自分の系譜の者なのだ。
サラフと同じように、また今まで手を貸してきた幾人かと同じように、終焉に住んだことのある、終焉の子供。
彼女が告白するのは、俺が終焉だからだ。
人間はよく、終焉の前では雄弁になる。
ここまではシリアスというか、しんみりした感じの展開でした。
「私の魔物はお恥ずかしながら、変態的嗜好を持っています」
「ん、ああ。そう言ってたな」
「あのアルテアさんにすら、難易度が高いと言わしめる程です。そんなディノと、危険を冒してまでその手の妄想をしてみる程、私はまだ経験値を積んでいないのが現状です」
「アルテアがそう言ってたのか……」
さすがにそれは不安になった。
アルテアであれば、大抵の不埒な経験は積んでいるだろう。
(その彼が、難易度が高い……?)
アルテアさんはイメージがブレませんね。
先程の穏やかさと感傷を返して欲しい。
全くです。
見る限り、シルハーンは足を踏んで貰いたがっていて、場所を選べと叱られていた。
最後の終焉を果たし疲れて帰ってきたところで、あまり見たい光景ではない。
全くです。
とても上手く躾けてはいそうだが、確かに荷が重そうだ。
サラフに見せてはいけないような気がして、彼を適当な理由をつけて急ぎ城から追い出した。
身勝手かもしれないが、子供の頃から見てきた風竜の長を、あの道にだけは踏み込ませたくない。
彼女との別れが惜しいのか、かなり抵抗されたので、最後は力技で他国に放り出す羽目になった。
教育上良くなさそうですものね。
一刻も早く、専門家を見付けよう。
始まり、しんみり、その後のコメディ展開の温度差よ。