「仮面の妖精とご褒美のケーキ」より。
いろいろあるけれど、好きなやりとりの抽出を先に。
ゼノとグラストさんお仕事中にネアとゆかいな高位の魔物たちに遭遇。
「アルテアさんが目立つところに立っていたので、不愉快な思いをした方がいたそうです」
「その理論で語られると、俺は一体何なんだ」
「相変わらず、悪い奴ということでしょう」
「酷いまとめようだな」
ネア&アルテア。安定のやりとり。
そして待ち合わせのために見つけやすいよう待ってたアルテアさんへのこの仕打ち。
紺色のすっきりとしたドレス姿のネアは、袖口のレースが白いので、同系色の髪色になったアルテアと対になったような色合わせをしている。
これを見たらディノが嫌がるだろうなぁと、僕はこっそり考えた。
アルテアなんて・・・。
「おや、ゼノーシュか?」
困ったなと思っていたところで、後ろから声をかけられる。
これだけ警戒しているのに気配もなく出てきてびっくりしたけれど、なんとか体を揺らさないように振り返ることが出来てほっとした。
「ウィリアム、」
「久し振りだな。大きくなったか?」
「べつに………大きくなった」
ゼノは最近いっぱい食べて進化して縮んだ設定。
少し悪戯っぽい挨拶に、何も変わってないと言おうとして、グラストに成長して姿が変わったと話してあることを思い出して、慌ててそう言いかえた。
「………大きくなったのか?」
大きくなったの定義が迷子。だけど押し通す。
高位の魔物は、基本的に生まれた時から姿を変えない。
それがわかっているから、ウィリアムは驚いたみたいだけれど、目を合せないようにする。
目線だけ逸らしたまま、胸に手を当てて深く一礼した。
ここからネアちゃんの采配?が光る。会話の魔術師。
「そういえば、ディノ。アルテアさんが悪い友達とつるんでいて、私の生活環境を脅かします。懲らしめて下さい」
「わかった」
「………は?何のことだ?」
あまりにも自然にネアが切り出したので、僕とグラストは顔を見合わせたまま固まった。
慌ててネアの方をみたけれど、どうしてかネアはこちらを見ようとしない。
あくまでも、自分事としてどうにかしてくれようとしているみたいだ。
「ロクマリアの妖精さんと、何やら悪巧みをしているのですよね」
「ロクマリア?一昨年あたりに滅びた国だな」
ネアの言葉に露骨に嫌そうな顔になったアルテアに、ウィリアムも会話に加わる。
「はい。その妖精さんの元ご主人様は、お国が危うくなってからエーダリア様に求婚されたのだそうです。そして私はこれでも、エーダリア様の元婚約者です。この事実の並びだけでも、身の危険しか感じません。きっと、茹で肉の魔物さんを帽子に放り込んだ件で、私に報復しようとしているに違いないのです」
「やっぱりお前か!」
「それは不安にもなるな。俺からも確認しておこう」
にっこり微笑んで向き直ったウィリアムに、アルテアは慌てて数歩下がった。
茹で肉の魔物・・・。
僕たち魔物は良く知っていることだけど、ウィリアムのこの微笑み方は怖い。
「あの妖精が俺をつけ回しているのは私怨だ。俺から接触したことは、今まで一度もないぞ?」
「……え?」
思わず声を上げてしまったら、赤紫の鋭い瞳がこちらに向けられる。
この問題を精査する為に彼女を使ったのはお前だろうと、
鮮やかな鋭さが刃物みたいにそう笑った気がして、背筋がひやりとした。
このへんは、アルテアさん魔物だなぁ、高位の、と思います。
「うわっ?!」
その次の瞬間、アルテアが悲鳴を上げて飛び上がる。
「ムグリスですよ。私に似てるでしょうか?」
でもシリアスにはならない。ネアちゃんペースで物事は進む。
「…………結論で言えば、色は同じだな。それと、あの妖精は行く先々に勝手についてきて迷惑している。欲しけりゃくれてやるぞ?」
「どうして付き纏われているんだ?」
「もしや、恋でしょうか。つけ回しをする方に以前出会ったことがありますが、理由は恋でした」
「黒煙と一括にするな!あいつが俺を追うのは、あいつの記憶を奪ったのが俺だからだ」
「………悪さをしたんですね」
「そのお前の評価はなんなんだろうな…………。向こうから呼び出されて、仮面の付け替えを依頼されたんだ。余程忘れたいことでもあったんだろう。そのくせに、これだけ時間が経ってから、やはり記憶を返せと言い出したわけだ」
「まぁ、優柔不断な妖精さんなのですね。私はてっきり、アルテアさんは妖精に目覚めてしまったのかと……」
「……あれは、男だぞ?!」
「何を言っているのでしょう。昨今珍しくもありません。アルテアさんなら経験済みの筈です」
「ふざけるな……」
「でも、その妖精が記憶を取り戻すと厄介なんじゃないのか?」
「私とエーダリア様が、真っ先に狙われますね……」
「ネア、心配しなくても後で排除しておいてあげるよ」
「ディノ、有難うございます。でも排除はいけませんね。拘束して、ゼノにあげましょう」
きれいにゼノに繋げたあたり、お見事です。
「ディノ、アルテアさんのお説教が終わったら、何を食べたいか考えておいて下さいね」
「ネアの好きなものでいいよ?」
「本日は、ディノの好きなものを食べに行く会にします。ゲテモノ以外であれば、アルテアさんがお財布になるので、遠慮しないで言って下さいね」
「待て、何で俺の支払いが決定しているんだ……」
「じゃあ、ザハにしようか」
「………おい、シルハーン」
お財布のアルテアさん。
ザハとは
老舗ホテル
高価なチョコレートケーキが有名。ウィームの中心街にある。真紅の絨毯と旗が目印。
一階にカフェ兼レストラン、二階にラウンジ。一階と二階は吹き抜けで繋がっている。
カフェ内は白とミントグリーンを基調 にした上品な雰囲気。少しお値段は張る。
十年程前に倒れた王家から出奔した料理人たちが奮起し、ザハという歴史は長いがあまり奮わなくなっていた高級ホテルの料理部門を安定させた。菓子部門もあり。
(薬の魔物有志まとめwikiより)
どうしたってザッハトルテを思い出して、食べたくなってしまう。
チョコケーキとして有名だけど、そこここかしこには売ってなくて、だいたいはクラシックショコラ?それも美味しいけれど。
あれ?最近、普通の菓子店でチョコケーキを選んでないかもしれない・・・。
洋菓子店に足を運んでいないかもしれない・・・。
僕たちの探していた妖精は、あちこちで人や魔物を殺して移動していた。
実際の交戦がなくても、いつどこから現れるかわからない妖精を追跡するのは、人間には消耗する作業なのだろう。
僕は移動も出来るし、探せるし、グラストはもっとのんびりしていてくれればいいのに。
そう思っても、いつもグラストは僕の前に出てくれてしまう。
「グラスト、ネアが持っていってくれたよ?」
「騎士としてはいささか情けないですが、仮面の魔物が敵に回らなくてほっとしました」
ゼノたちの探していた妖精は、なかなかな拗らせ妖精で、その後も出てきます。
拗らせ妖精の過去回→「灰羽と王女」(私は泣いた)
あまりいい噂を聞かないアルテアさんの話
- 仮面の魔物がアルテアという第三席の魔物だと判明
- ゼノはそれまでに一度も会ったことがない公爵。
- あまりいい噂は聞かない。
- 特に人間と添い暮らす契約の魔物にとって、多くのものを壊す彼は、とても不穏な存在。
「リーエンベルクに帰ろう、グラスト。僕、すごくいい枕持ってる!!」
「はは。それは楽しみで……だな。しかし、ゼノーシュの枕がなくなりませんか?」
「六個あるから大丈夫だよ」
ネア達みたいに、言葉を滑らかにするのは難しい。
でも少しずつ、時間を重ねて僕は僕の欲しいものを手に入れよう。
これは短い時間だからこそ、大事に大事にするものなのだ。
大事に大事にする。
ゼノはいい子だなぁ、と、ほっこりしました。
本日、お茶会1日目。
個別包装にてコッソリお祝い㊗️
娘が焼いた紅茶スコーンと、
私が作った、いちごのコンフィチュール…的な?
砂糖でなくて、みりんと煮たのですが、自然な甘さ過ぎて練乳足したくなったので、今度からはお砂糖で煮ようと思いました。