くすまもな日々

「薬の魔物シリーズ」個別包装仕様のファンのブログ

ザハのお持ち帰りケーキ

チョコレートケーキと生クリーム」より

 

翌朝、ネアはザハから持ち帰った戦利品を、仲間達に披露した。

昨晩は、アルテアの奢りで、ザハという高級ホテルのレストランで食事をしたのだ。

最初はあんな嫌そうだったくせに、買い物の場面になるとアルテアは金払いのいい男だった。

アルテアさんは太っ腹。株が上がった。

ネアはまず、ゼノーシュ用の木箱入りのチョコレートケーキを一つ確保し、後はありったけの種類のカットケーキを持たされ、食べ物は自分で持ちたい主義のネアでさえ、渋々ディノの魔術を頼ることとなったくらいだ。

大量にお持たせ。株が上がった。

「どれを選んでもいいの?ネアのはどれ?」

自分専用の木箱を抱えたまま、ゼノーシュが瞳を輝かせる。

あまりにも幸せそうにケーキを見ているので、ネアは昨晩の疲れが吹き飛ぶような気がした。

ゼノの可愛いが正義。

ネアは「薔薇のクリームのケーキ」を確保

ゼノが選んだケーキ

・ホワイトチョコレートとブルーベリーのケーキ。

・苺のケーキ(ネアが男前に指し示した)

ほわっと花が舞うような微笑み方をして、また健気にも見聞の魔物はグラストを見上げた。

お菓子を貰った子供が親に報告する仕草に、観覧者は皆表情を綻ばせる。

とても微笑ましい光景が想像できる。

エーダリア様が選んだのはグラスに入った柑橘類とミントのゼリーのようなもの

淡く金色に輝いているゼリーの部分は、香草のゼリーとなっていて、爽やかな甘さの一品だ。

エーダリア様は、甘党ではない。

だが非常にバランスよく食事をするタイプ。

ヒルドさんが選んだのは葡萄と葡萄酒のゼリー

グラストさんが選んだのは、シフォンケーキのようなシンプルな紅茶のケーキ

「お財布はアルテアさんですので、安心して貪って下さい」

その一言で、事情を知らなかったエーダリアとヒルドが、無言で顔を上げた。

「………お前は、あの魔物に奢らせたのか?…………贈答品とは言え、食べ物を?」

「ええ。昨日の飲食代は謝罪相当ですから。ねぇ、ディノ?」

「うん。アルテアは元々、こういう買い物は好きだから気にしなくていいよ」

アルテアさんは元々こういうお買い物が好き?文句を言いながら、チッ、しょーがねえな、って美味しいものを選んでくれるような魔物。

本日の魔物は、自分で結んだリボンの結び目がお気に召さないらしい。

しょんぼりとしていて心ここに非ずなので、後で結び直してあげよう。

私もリボン可愛く結べないので勝手に親近感。

「アルテアさんは、お買いもの好きなのですか?」

「洋服もその他のものも、何でも好んでするよ。自分の屋敷は、内装もかなりこだわっていたみたいだし」

「……自分の屋敷?」

「そう。私達は元々、魔物としての領域にそれぞれの城があるけれど、アルテアは人間の国にも自分の屋敷を持っているんだ」

「その土地に何か由縁でもあるのでしょうか?」

「いいや。単に、集めた品物を使いたいからだよ。庭も監修していた筈だ」

「…………庭」

こだわりの料理をつくり、庭も監修する魔物、アルテアさん。

「そういう趣味を持つならば、ウィリアムさんの方だと思っていました」

「ウィリアムは、何でも自分でやる生活が元々好きだからね。アルテアの趣味とは少し違うのかな」

「わかるような気がします。料理で例えるなら、ウィリアムさんが普通のお塩なら、アルテアさんって、こだわった稀少なお塩とか使いそうですものね」

ウィリアムさんがお選ぶお塩→普通の塩

アルテアさんが選ぶお塩→この料理にはこの塩、あの料理にはあの塩でないとダメだ、とか言いそうなこだわりの塩

自分の食べたい範疇で、美味しいものが作れればいいのだ。

手の込んだものは専門家に作ってもらえばいいので、ネアは特に修行などしない。

ネアちゃんのメンタルスタンスでないと普段の料理生活は継続できない。

プレーンなものは知っているので、変わり種のグヤーシュの作り方は何種類か学んだが、それはネアの魔物の大好物なので、当然のことである。

自分の魔物の好物は、作れて当然。素敵です。

「ディノはもういいですか?」

「部屋にある一個で充分だよ」

「では、私はこの林檎とシナモンのケーキを一ついただくので、計二個になります。無難そうなチョコレートケーキと、苺のケーキを料理人さんと給仕さんに差し上げるので、残ったものはみなさんで取って行って下さいね」

ネアちゃんの追加のケーキ「林檎とシナモンのケーキ」

ゼノの追加のケーキ「白葡萄のケーキ」

ヒルドさん追加のケーキ「チーズケーキ」

こうして見ていると、同じように妖精のヒルドも甘いものは好きそうだ。

(常より妖精は贈り物と甘いものが大好き。)

ウィリアムさんは甘すぎてケーキを食べられない

ウィームの気候は、食べ物の保存には向いているのだろう。

尚且つここに居る者達はみな、食糧の悪化や劣化を防ぐ魔術ぐらい、造作なく使える者ばかりだ。

食糧の悪化や劣化を防ぐ魔術、欲しいです・・・!!

 

気分だけでもウィーン。