くすまもな日々

「薬の魔物シリーズ」個別包装仕様のファンのブログ

宝石の色彩

宝石紡ぎの妖精」より

 

歌乞いとしてのネアの正装をという形で発注されたケープ

  • ベースとなるのは以前にディノが集めてきた品物の中にあった水竜の毛皮
  • そこに有名な刺繍妖精が、刺繍で守護の模様を描き出してくれる
  • 草花や星、月に太陽などの複雑な柄を、同系色の糸で刺繍してゆき、豪奢なケープになる
  • そのケープに使う宝石類の内、鮮やかな色を持つのものをヒルドが育ててくれた
  • ケープの宝石はヒルド本人から色を紡いだ。

ヒルドは宝石を育てる妖精

森の中のあらゆるものから、或いは湖や木漏れ陽から色を紡ぎ、宝石に育てる。

「ええ。雨の滴の表現と、菫色の花に、青い花に葉の緑でしたからね。私にある色彩でしたので、手近なものから紡いでしまいました」

「そんな素敵なことが出来るのですね。あのケープが出来上がったら、ヒルドさんとディノに守って貰っているみたいな気持ちになると思います」

うきうきとそう答えれば、ヒルドは満足げな微笑を深くする。

夕暮れの薄闇に包まれた廊下で、見事な羽が薄らと光を帯びた。

自身の身に、そんな色彩があるのがすごいと思います。

「リノアールにいる妖精であれば、恐らく可能でしょう。ただ、髪そのものに触れさせるより、切った毛先や抜け落ちた髪の毛を持ち込む方が良いでしょうね」

切った毛先や落ちた髪の毛を高級店に持ち込む感覚は、ないなーーー(私には)

髪も随分長くなったし、前髪や毛先をカットするのもいいかもしれない。

ドレスなどを着るこちらの装いでも地味になり過ぎないよう、顔周りの髪を少し調整したいのだ。

ネアちゃん、魔術可動域低かったのに髪のばせたのだね。よかった。

こんなに近くに職人がいるのだが、今回はディノへの贈り物である。

ヒルドに頼むのは筋違いだろう。

ヒルドさんが紡いだ宝石はディノ、嫌がると思うので、ネアちゃんの判断、正解。

 

リノアールへ行く時には、ゼノーシュに付いて来て貰った。

ゼノーシュに聞いてみると、階位の高い魔物は派生してからずっと独立して生活しているので、階位の低い魔物の方が複数で群れているらしい。

ゼノーシュ自身、友達というような友達はあまりいないそうだ。

高位の魔物はずっと独立して生活している。

「お休みの日は何をしているのですか?」

「グラストの観察してる」

「…………それはもう、一緒に行動すればいいのでは?」

「でも、他の騎士達と飲みに行ったり、親戚と会ったりもしてるし。………お墓参りにも行くし……」

最後のところでぐっと声が低くなったので、ネアは慌てて話題を変えた。

これ以上、クッキーモンスターの闇に踏み込んではいけない。

グラストの観察・・・。

「そう言えばゼノ、グラストさんへの贈り物は差し上げるんですか?」

「うん。最近、腰が痛くなくなったら枕が合わなくなったみたいだから、枕をあげる」

「睡眠は大事なものですので、それは物凄く喜ばれるでしょうね」

「古い枕は、誰かに貰ったみたいだから、破棄する……」

ゼノの闇・・・。

ネアの訪ねたリノアールの宝飾品

  • リノアールの宝飾品が並ぶ通りの一番奥に、いかにも一見様お断りな雰囲気を出している宝石店。
  • シックな焦げ茶で統一された店内
  • 室内は照度を落とし、硝子張りのショーケースに光が当たってきらきらと美しい
  • 店主は上品な黄緑色の羽を持った老女。
  • 経年でひび割れた声だが、味があって美しい。

「こちらで、宝石を紡いで下さると伺ったのですが」

「ええ。花でもドレスでも、お好きな色を紡ぎますよ」

本日のゼノ

  • 蜂蜜色の髪に擬態
  • 擬態したところで飛び抜けて愛らしいのは変わらないので、高位であることは隠しようがない。

「実は、私の髪の色を紡いで欲しいのです」

「髪の色ですか。はい。時々そういうご要望も受けますねぇ。勿論可能ですよ」

さらりと受け止めてくれたので、拍子抜けした。

随分と猟奇的なお客だと警戒されるかと思っていたが、よくある注文のようだ。

それでもやっぱり猟奇的かなって思います。

昨晩、家事妖精に手伝って貰い、こっそり髪を切ってある。

前髪を少しすっきりとさせ、顔周りに動きのある毛束を作れば、元々、鉢周りは短くすると緩くくりんと巻く髪質なので、印象が明るくなった。

その結果出た切り落とされた髪の毛を詰め込んできたのである程度の量があるものの、必要量がわからずに全部持ってきている。

「充分ですよ。この量なら、親指の先くらいの大きさまで紡げますね」

「男性に差し上げるものなので、あまり大き過ぎない方がいいかもしれません。こちらに展示されている赤い宝石くらいの大きさでお願いしたいです」

「であれば、色彩の純度を上げて、色に深みを出しましょうか」

「まぁ、そんなことが出来るんですね」

色の純度が上げられる。

「……ネア、もしかしてこれ、ディノにあげるの?」

「ええ。ディノは現在、私のブラシから、抜け毛を収集する困った癖があります。これを渡して、是非に止めてもらいたいのです」

「…………そこまで行くと、止められるかなぁ」

「止めなければいけない案件だと思っています」

ブラシから抜け毛を収集する魔物の王。

 

宝石を入れるケース

  • 月光の結晶石のものにした。
  • オーロラの結晶もあるそうだが、さすがにそれは予算オーバー。
  • 白に近い色彩で幾つかサンプルを出してもらったが、月光が最もディノの色彩に近かった。
  • 艶消しの白の一角獣の骨も綺麗だったが、やはり骨というところがネックになった。
  • 白に拘らなければ、雨だれの結晶など、思わず自分買いしてしまいそうな美しさ。

ケースの素材も、どれも素敵。

いろんなものが結晶化されるのですね。

今回ネアが支払ったのは、歌乞いとしての半月分の給金に相当する。

やっぱり宝石はお高い。

「宝石を育てていただくのは、とても大変なのですね。ヒルドさんからケープ用の宝石を沢山貰ってしまったのですが、金額に換算したらとんでもないことになるのでは……」

「本人が好きでやってるみたいだから、気にしないでいいと思うよ。それに、ヒルドはシーだから、宝石を育てるのも早いみたいだし」

「………そうか、個人の処理能力の差というものもありましたか」

「それ以前に、ものすごく喜んで作ってそうだしね」

「成程、ヒルドさんは宝石作りがお好きなのですね」

ネアの結論に、なぜかゼノーシュはどうだろうという表情になったが、ディノもその宝石作りに参戦した際のことを思い出して、ネアは得心した。

ケープに使う宝石をヒルドが育ててくれたことを報告したら、あの魔物は、数時間で山ほどの白い宝石や見事な真珠を抱えて戻ってきたのだ。

無駄に競争心が掻き立てられたというよりも、途中で楽しくなってしまったらしく、本人も作り過ぎたという表情だった。

この世界、宝石生成できる魔物や妖精や鳥?がいます。

封筒に抜け毛を溜めこむくらいなら、宝石の方がきっと喜んでくれるだろう。

収集されていることを知ってからは、抜け毛を放置しないようにかなり用心している。

抜け毛を放置しないように用心・・・。猟奇的。

それでも、共用しているブラシを見て残念そうにしている魔物を見ると、何とも言えない気持ちになった。

そんな厳戒態勢の中でも着々と増やされているので、あれは一体どこから拾い集めてくるのかと恐怖しかない。

お労しい・・・。

 

宝石についての概念が揺らぐ回でありました。