「首無し馬と魔物の巣」より
ネアちゃんが首無し馬に蹴られて泣きながらディノの巣に不法侵入してるのが可愛かったです。さらに、復讐するつもりが、成仏?させてしまったのも良かった。
「………お庭にいた、首無し馬の亡霊に、お尻を蹴られました」
「わかった。消滅させてこよう」
魔物の低く甘い美しい声が、一瞬で刃物のようになる。
ネアを蹴った馬は「林檎の暴れ馬」
- 首無し馬の亡霊は茶色と黒と灰色がいる
- 黒は林檎の暴れ馬
- 三日に一度の林檎を好きなだけ貰える日の早朝に、殺された馬
- 幸せそうな者を見ると、無差別に攻撃してくる
後日、ディノに護衛として同行して貰い、首無し馬の亡霊に林檎を投げつけてみた。
復讐してくれるというディノを制しながら、ここ数日この瞬間を待ち侘びていたのだ。
「……………え、ご機嫌?」
蹄で地面を蹴って大喜びで、首無し馬は大興奮している。
思いがけない喜びの舞に、ネアはぎりぎりと眉間の皺を深くした。
喜ばせるつもりなど微塵もない。これは、復讐だった筈なのだ。
「………食べ終わったみたいだよ」
「おのれ、完食しましたね」
大好物の林檎を食べて大興奮の馬がこちらに向き直る。
首無し馬は、ぽひゅんという音と共に淡く光って消えてなくなった。
「………ディノ?」
「浄化されてしまったみたいだね」
「ディノが消したわけではなく、自発的に消えてしまったんですか?」
「林檎を食べれて、幸せになったんじゃないかな」
報復が裏目に出た図。
これでは、酷い目に遭わされた上に、林檎を奉納しただけの被害者の構図ではないか。
蹴られて林檎を奉納して浄化させてあげてしまった。
「勝ち逃げされました。これ以上の敗北があるでしょうか……。とても心が荒んでいるので、リノアールに新しい入浴剤を衝動買いしにゆきます!」
「好きなだけ買ってあげるから、元気を出して」
勝ち逃げされて、ディノに甘やかしてもらうご主人様。
林檎の暴れ馬の過去は悲惨なので(楽しみにしてた朝に殺されたなんて)、成仏できたのは良かったかなと思います。