「冬籠りの魔物と冬籠りの妖精」より
冬籠りの魔物がいる。
正しくは、冬籠りの魔物と妖精がいる。
魔物は冬籠りに向けての備蓄を司り、妖精は冬支度の手伝いをする隣人である。
- 冬籠りの魔物→冬籠に向けての備蓄を司る
- 冬籠りの妖精→冬支度の手伝いをする隣人
なんかややこしい。
ネアが見つけた冬籠りの魔物
- サッカーボールのような毛玉の魔物
- ほとんど真円
- 少し不細工な猫に似てなくもない生き物
- 元は栗鼠くらいの生き物
- 低い声でミーと鳴くのは空腹の鳴き声
ネアに敵意を向けてきた冬籠りの妖精
- 小さなモモンガのようなもの
- 冬籠りの妖精は普段は温和な生き物
- ヒルドの羽にへばりつき、小さな手でばりばりとヒルドの羽を掻いた
- ヒルドは涼しげな顔で、モモンガを一瞥したら、恐怖のあまり失神
冬籠りの魔物が太った理由
冬籠りの魔物だと気付いた妖精が、ギャアと大きく鳴いてから、頬袋から取り出した植物の種のようなものを魔物に渡しにかかった。
冬籠りの魔物は、渡された種をもしゃもしゃと貪り、満足げにミーと鳴いていた。
その雄叫びに、冬籠りのモモンガ妖精は、小さな尻尾をぶりぶりと振ってこちらも喜びを表現している。
しかし、そちらを見ることなく魔物は寝落ちした。
お腹が膨れて満足したのか、冬籠りの魔物はまたしても熟睡に入ったようだ。
そんな丸い魔物を揺かごを揺らすようにして、冬籠りの妖精があやしてやっている。
魔物を揺さぶる眼差しは恍惚としていて、とても幸せそうだ。
「…………これは、」
「どうやら、元凶はこの妖精のようですね」
献身的に徹底して魔物を甘やかす、冬籠りの妖精。
「面倒はこの妖精が見るにしても、このままでは巣穴に入れずに凍えてしまいますよ。騎士達の詰所にでも置いてきましょう。あの棟は広いですから、どこか適当に巣作りするでしょうし」
リーエンベルクの建物
- 基本的にリーエンベルクの建物には全て、状態保持の魔術がかけられている。
- 特定の術式を組まないと、模様替えも出来ない。
- 壁に穴を開けたりは出来ない。
- リーエンベルクの結界は益獣の侵入を阻まない作り。
かくして、強制ダイエット合宿に放り込まれた冬籠りの魔物は、ひと月ほどでだいぶ小さくなったらしい。
冬籠りの魔物と妖精効果
- 貯蓄を促進する効果のせいでとても縁起のいい生き物。
それを聞いたとき、ネアは声を失う程に衝撃を受けた。
手離さないで、里親になれば良かったと、心からの後悔に項垂れるご主人様を、ディノは、抜け目なく椅子になって慰めている。
この献身も困ったものだと、ネアは、持たされた髪の毛を眺めながら考えずにはいられなかった。
貯蓄を促進する効果のある魔物と妖精!!!
良き組み合わせですね。縁起物。
今回の回は、ヒルドさんが策士っぷりを披露する回でもありました
(ディノに見られたら殺意を抱かせる系)
「落ち着かないですか?」
「……ええ。あまりにも、ヒルドさんの領域に踏み込み過ぎているようで」
「私は気にしませんよ。庇護するものに触れるのは、妖精の悦びですからね」
その声の甘さに、不意打ちでどきりとした。
眠っている魔物がいるからだろうが、低く抑えられた声がどこか淫靡だ。
羽の中にネアちゃんを囲いました!!!