「イブメリアの朝には贈り物の話をします(本編)」より
「衣」関連
ネアが貰ったのは、儀礼用のケープ。
- 贈り物として与えられた礼服は祝福が強く、良い品物になるということで、儀式用のケープはイブメリアの贈り物として作られた。
- デザインを決めただけでなく、刺繍も含むケープの作成そのものの代金をエーダリアが負担し、宝石を提供したヒルドに加え、糸を購入してくれたのはグラストとゼノーシュ。
- それまでも素晴らしいケープだと思っていたが、イブメリアが近づくにつれ、徐々にどの材料が誰の提供だか明かされてゆく中、ネアは嬉しい驚きを噛み締めていた。
- 最初の頃のネアは、上から事務的に与えられる制服のような感覚で仕立てられたのだと思っていた。
- それでも材料にディノやヒルドの制作物が使用されているので、徐々に愛着が深まってゆき、まさかのこの種明かしである。
- 加えてあのケープには、見事な隠し刺繍があった。
- 雨や霧に濡れると、刺繍された花々が雨に濡れる絵柄が浮かぶ。
- そこにはまた違う宝石が使われており、ネアはその秘密を知ってからあらためて、魔術というものの奥深さに驚いた。
- 霧の結晶や夜の結晶までも、ヒルドさんの育てたもの。
- 色を足したり、色味を変えたり、大きさや透明度を変えたり。
- たった一枚に見えるケープに、何面もの顔が潜んでいるらしい。
- 雨の刺繍を明かしてくれたヒルドの口ぶりでは、まだ他の刺繍もある気配がする。
「食」関連
イブメリア用の美しい絵皿に、イブメリア用の料理
- 赤身の魚のカルパッチョと、生クリームたっぷりで焼いたキッシュ。
- 鴨の林檎のソースに、キャビアに似た魚卵を塩味のアクセントにした海老の冷製ゼリー寄せ。
- 勿論、ローストビーフとチキンも。
- 祝福の時節が開始されてからの料理を、一口ずつ盛り付け食べ直すのがイブメリア当日の料理の習わし。
- 祝祭の前夜祭にあたるバベルクレアや、クラヴィスには代表料理があるが、それ以外のメニューは各家庭ごとに違ってくる。
- 略式で、ローストビーフとチキンだけの家が多いものの、正式なスタイルを踏むリーエンベルクでは、毎晩の料理を揃えた為に品数がとにかく多い。
- しかし、それをいかに苦なく楽しく食べさせるかが、料理人の腕の見せ所だった。
- 外食の日などは、朝食の品を引用したり、重くなり過ぎないよう、サラダから選出されたりもする。
- 焼きたての温かな栗と茄子が入ったサラダは、暖かいものと冷たい葉物でたまらなく美味しい。
イブメリアの風物詩である白いケーキ。
- ウィームの雪に見立てたケーキと、血脈の繁栄と犠牲を意味する赤い装飾が揃えば特にそれ以上の決まりごとはない。
- 赤は、苺などの果実であったり、飴細工であったりと、各家庭や地方でまた特徴を分けた。
- なお、赤い果実ということでは、市井の家庭では林檎がポピュラーとされる。
- 逆輸入の感覚で、近年ではイブメリアは林檎という風習も新生しつつあった。
- 丸々と艶めくインスの実だが、少量の毒があり食用には向かない。
- 毒があるからこそ災厄避けのリースに使われたのだが、飾り付けの赤い実が食べられないので、何でもいいから赤い実が食べたいという人々の欲求から、この風習が生まれたのではないだろうか(ネア推測)。
- リーエンベルクのケーキは、苺も林檎も全部ある。
- まあるいケーキは、つやつやと真紅に輝いていた。
- あらゆる赤い果物を丁寧に敷き詰めてあるケーキは、丁寧に飾り切りされて、或いは並べられて、赤いレース模様のよう。
- 赤い果物とは別にイブメリアの代名詞でもある葡萄もあり、シンプルな生クリームのケーキの雪原の上面を輝かせていた。
- 側面はあえて純白に残したところが、上品で素敵。
- ケーキにナイフが入ると、カードやプレゼントの話をするのもお作法の一環。
- それまでは、公の場で秘密を明かさないのが決まりなので、イブメリアの婚約の発表などは、大抵ケーキを食べながら報告される。
「アイテム」関連
イブメリアの日、ウィームは穏やかな雪の朝。
- 屋内の飾り木は見事なモミの木に似た針葉樹で、枝先のところどころが、雪化粧のように白緑色に結晶化している。
- そこに、ウィーム伝統の白磁の円形のオーナメントや、水色の天鵞絨に繊細なビーズ刺繍を施したオーナメントが飾られる。
- インスの赤い実はよく熟れた苺の色で、同じような赤色の小ぶりな赤い林檎のようにも見える不思議な結晶石飾りは、内側で淡く魔術の火が燃えていた。
- 飾り木の頂上には、星の形をした半透明の淡い金色の飾りがあり、今はもういない光竜の鱗から作られたもの。
- 雪が降らないイブメリアは、祝福が足りないといわれている。
ネアがエーダリア用に用意したのは、とある西国の術式本。
- 魔術師達の間で小さな国で独自に進化した魔術形態が話題を呼んでいるらしく、だが閉鎖的なお国柄、中々外には出てこない物。
- 特に術式本を秘匿しているわけではなく、単に外に流通させるだけの利益を生まないからこその希少性。
ヒルドに贈ったのはグラス
- ウィームの森の木々から育った、森の結晶で彫り上げたというグラス。
- アーヘムに会いに行ったときにお酒を好むと知ったので、グラスにした。
- 実用性があり、収集品としても成り立つ。
グラストとゼノーシュには手袋
- こっそり配色がお揃いになっている手袋をあげた。
- グラストが竜革と水狼の毛皮のもの。
- ゼノーシュが竜革と、雪兎の毛皮のもの。
- 毛皮の種類は違うが、黒と水色がかった白い毛皮のもの。
- ゼノーシュは外側にも毛皮部分が多めで、
- グラストの水狼の毛皮は裏打ちされている。
- 魔物にとって手袋は必需品ではなく装飾品。
くすまもの世界観
高位の竜は人型を取る
- 人間は竜の人型や高位の魔物の姿を元にして作られたと言われている
- 妖精と人間は起源が同じくらい。
感想
やっぱりクリスマスなアイテムや雰囲気は、ワクワクさせてくれます。
白いケーキと赤い実の対比は美しさを感じますね。
イブメリア用のクリスマスのメニューは、きっと再現したあわいの民もおられることでしょう。
わたしも今年のクリスマスは、できるだけ再現してみたいものです。