「イブメリアのミサに参加します(本編)」より
くすまもの世界観
イブメリア
イブメリアの朝のミサは、八時から始まる。
ウィームのミサは、魔物や精霊、妖精に竜など様々な種族が集まる為、それぞれの国や領地での最初の祝辞を終えてからの集合になることを考慮した。
大聖堂の前面
- 柵で区切られ、ウィームの冬を表現した見事な瑠璃紺と紫紺の織模様が美しい絨毯が通路ごとに敷かれている。
雪の百合
- 各席に置かれた真っ白な雪の百合は、鹿角の魔物を現したイブメリアのミサの象徴。
- イブメリアが終わると崩れて消えてしまう。
会衆席
- 繊細な彫刻が美しい会衆席は全て、雪の結晶石を彫り上げたもの。
- 長椅子で二人ずつで区切られており、設置された位置で幅や高さを微妙に調整されている。
- 気の遠くなるような繊細な作業
- 聖堂内のほとんどの装飾に人外の手が入っているので、職人達の技術の粋と言うよりは、魔術の叡智の粋と評価するのが相応しい。
祭壇のある聖域
- 信仰の魔物、領主、司祭、そして送り火の魔物が立っている。
- 聖卓とされる位置には、冬の赤い果実が綺麗に盛り付けられた雪の結晶石があり、この時間は丁度その上にステンドグラスの鮮やかな光が落ちていた。
- 採光に仕掛けがある(ネア考察)
- 創意工夫のような手仕事ではなく、恐らくこれも魔術による効果。
ミサ
- 静謐な朝の空気に、左右の大きなステンドグラスには降りしきる雪の影が映る。
- 荘厳なパイプオルガンの音と共に、奉仕者と司祭が祭壇に向かう行列は絵画のよう
- 信仰の魔物であるが故にあらかじめ祭壇に立っていたレイラも、絵のように美しい。
- ミサはここからが長い。
- ここで行うミサはそれ自体が魔術の式そのもの。
- 奉仕者達の表情がきりりと引き締まっているのも、実際に彼等が術式を行う者だから。
- 開祭の儀に始まり、説教や讃歌、祈願などが続いてく。
- (二度目以降は眠くなるなと密かに思うbyネア)
- 讃歌のところでは、厳しく言い含められているネアはほぼ口パク(音痴なので)。
「汝、イブメリアの訪れを、その祝祭の成就と繁栄を望むだろうか?」
「はい。我々は皆、イブメリアの成就を願う者。この雪深き祝祭に、多くの恩寵と奇跡があらんことを」(ミサの決められた受け応え)
くすまもの「衣」関連
エーダリア
- 今日はウィームの最高位としての白の正装姿
ネア
- 濃紺のケープに淡い菫色のドレス
グレイシア(送り火の魔物)
- 高貴な法衣のような衣装(祝祭の日の送り火の魔物)
- 目が醒めるほどに美しい
- ぼさぼさの髪はオールバックにして撫で付けられ、篝火の瞳が聖堂の薄闇に尾をひく鮮やかさ
- どこか物憂げな眼差しと、獣めいた冷ややかな美貌
アルテア
- 見た事のない青年に擬態。
- すらりと背が高い。
- 端正だが、どこか特徴のない見知らぬ顔。
- 柔らかな灰色の髪は後ろで一本に束ねられている
- 漆黒の正装で統一
- 本日は統括と背後の守りのお仕事。
ミサの流れ
詠唱を重ねたグレイシアの翳した手の平から、祭壇で大きな青い炎が燃え上がり、獣が駆け上がるように尖塔の方へと昇ってゆく。
何とも幻想的な光景だった。
暫くして聖堂の鐘が一斉に鳴らされたのが、尖塔の送り火台に火が灯された合図だ。
後方の一般席から、わっと歓声が上がった。
これで、イブメリアの祝福が訪れたことになる。
夜のミサで送り火が消えるその時まで、人々はウィームの大聖堂の火を見て、祝福のお裾分けを手にするのだ。
ここもまたネアの周知するミサと違い、最後は司祭の詠唱と、信仰の魔物の魔術で締めくくられる。
決して、魔術の理や術式を乱さないように、他の参加者が、言葉と歌以外で儀式に参加することはない。
どこまでも静謐に、そして厳格に。
これは儀式だと痛感しながら、ネアの初めての、イブメリアのミサが一つ終わった。
所用二時間あまり。
好きなセリフ、言葉など
「いえ。あちらで、私たちが親族ではないかと推理する声が聞こえたので、これだけ似てないのになと不思議に思っていたところです」
「私の所感ではなく、あくまでも初見の方が考えそうな分類ですよ?ディノは光属性ですし、アルテアさんは闇属性です。そして私は、……何でしょう、砂利?」
「……ネア、どうして砂利にしたのかな?」
「一般的なもので、灰色の分類を思いつきませんでした。……そうですね、せめて鳩とか、雨雲とか……。どうしましょう、灰色の一般性とは何なのか、思考の迷路に入りました」
間違っても鼠を例に出したくないネアは、必死にぴたりとはまるものを探したが、よくわからなかった。
灰色と言われても、最初から最後までムグリスしか浮かばない。
「……とりあえず初見者の分類は置いておいて、もし、お前が分類するなら何になるんだ?」
「アルテアさんは、アルビクロムの夜の繁華街でしょうか。秘密めいていていかがわしい、お作法の難しい特殊嗜好の上級者向けな感じです」
「わかった。この話は止めよう」
「ネア、私は?」
「……おい、この話まだ続けるのか」
「育ててしまったのはアルテアさんですよ。……ディノは、オーロラのような虹のような、恩寵や奇跡みたいに美しく、きらきらしいもので、でも真珠色の特別に可愛い大型犬でしょうか。困った行動を取りますが、ついつい甘やかしたくなります」
「ご主人様!」
「は?何でそれで嬉しそうなんだ?!」
アルテアは慄いていたが、ディノはとても嬉しそうに目元を染めた。
「途中から歩くかい?」
「ええ。イブメリアですしね」
「何処もかしこも混み合ってるだろう。隔離空間にでも入ろうぜ」
「ディノ、アルテアさんは、なぜに一緒に来るつもりなのでしょう?」
「ネア、イブメリアだからな、好きなものを買ってやるぞ?」
「……む。一時間くらいなら」
「ご主人様?!」
「…………一時間」
その後ネアは、友達がいないのかもしれないアルテアの為に、きっかり一時間だけボランティアに勤しんだ。
報酬として、素敵な魔術仕掛けのオルゴールと、イブメリア限定の高級葡萄酒を手に入れたので、良い仕事をしたと思う。
「せっかくなので、この葡萄酒を開けますか?」
「……違うものにしようか」
魔物は既に少々不貞腐れ気味である。
感想
儀式などの式典系は、様式美で抜かりなく、なのだけれども、2時間は長いですね。
ディノは光属性の大型犬。アルテアさんは闇属性でアルビクロムの夜の繁華街。ネアは砂利・・・。
あと、当然のように合流同行するアルテアさんのノリが好きです。
「何処もかしこも混み合ってるだろう。隔離空間にでも入ろうぜ」
魔物は皆、寂しがりですね。
そして、好きなものを買ってやるぞ?に釣られるネア様も大好きです。
ネアちゃんはアルテアさんには容赦なく遠慮ないところがいいですよね。